Ultra-Soft Ultra-Stretchy x Bio-Mimic
人の腕や太ももの内側の硬度(ショア硬度)は10〜15°、耳たぶの柔らかい表層部分で約5°、ちなみに一般的なマシュマロの硬度は10°くらい(下記ビデオで用いたマシュマロはとても柔らかく硬度4°).対して、当社の外付け人工膀胱は硬度ゼロ(※業界用語で硬度計で測定できない柔らかさ)の超軟性素材で構築されています.人の皮膚は腋の下が最も伸長性が高く、約70%伸びます.対して当社製品は2000%以上の超高伸張性の素材を使っています.
つまり、当社製品は人体表面のどこよりも柔らかく、皮膚のどこよりも圧倒的に伸びる素材でできています.人はこのような素材に対しては抵抗を感じず、センシティブな部位に押し当てても違和感を感じません.実際、当社の実験では9割以上の被験者が違和感どころか、装着してる感すら感じませんでした.

Video courtesy of Caprini Venous Resource Center
超軟性・超高伸張性の素材で製品を構築すれば装着感を劇的に改善できる.しかし、・・・一方で大きな課題がありました.超軟性・超高伸張性素材では、従来の工学的アプローチで機能部品を作ったり、部品と部品を接合したりできず、チューブや容器、コックなどを実装できないのです.この課題に対峙して我々が注目したのが、Biomimicry(生体模倣)のアプローチです.生命体の各部位は平面でも球でも楕円でもなく、ほとんどの部位は柔らかく、均一でも均質でもなく、左右対称でもありません.柔らかい部位どうしは従来理論の延長線上にはない発想で結ばれ、ヤワヤワ、ペラペラの素材なのに全体としては丈夫で簡単には壊れません.それだけでなく、多くのケースで生命体が持つ機能の方が工学的に構築された機能より優れています.例えば、トンボとヘリコプターの飛行の柔軟性、ヤモリとロボットの壁面歩行能力、動物の視覚とカメラの環境適応力、等々.左上のビデオは、人間の大腿静脈弁を模倣して当社が開発した逆止弁(Bio-Mimic Valve)です.左下はイタリアの研究者らが死者の大腿静脈に生理食塩水を流した時の実験映像です.
超軟性・超高伸張性素材は一般的な工学的手法が通じない一方、従来、非常識と思われたことができてしまいます.従来の工学的アプローチでは諦めていたことも生物模倣で幾つも実現できる機能があります.例えば、前述のBio-Mimic Valveは限りなく水圧ゼロの状態でも機能します.当社が開発した右下の自由形状収容機構ならば、収容量が少ない間は容器の存在も気になりません.我々は医療・看護・介護従事者の経験や知恵を借りながら、2つの技術が交差する領域の先駆者として、これまでにない優れた機能・製品を実現し、世の中に提供し続けます.
Deep Ergonomics
従来のエルゴノミック・デザインは素材そのものの抵抗感・違和感は拭いきれず、そこが快適性追求の限界とならざるを得ません.一方、超軟性・超高伸張性素材を使った製品では従来の限界の先の人間工学を追求できます.現製品の設計においても、尿圧のかかるメカニズムから尿道の形状や性質、皮膚の動き方、尿漏れを引き起こす症状を腎臓、膀胱から尿道口に至るまで人間の構造を深く考察、必要に応じて知財化しながら開発を進めてきました.
当社は、今後も解剖学的・医学的知見を掘り下げた設計でさらなる機能性・快適性を追求した製品設計を続けます.

Downsizing in Production
通常、超軟性素材を使う製造は生産効率が低くなります.射出成形などでは素材を高温でドロドロに溶かして金型に流し込みますが、一般に柔らかい素材は熱伝導率が低いので冷めにくく、さらに超軟性素材では冷めきる前に型から取り出すと変形してしまいます.一度に複数個を製造するために、通常、1つの金型に複数の型を彫りますが、超軟性素材の場合、奥行き方向に差し込むように型を作ると抜けなくなってしまいます.つまり、複数取りの金型を作るのも難しいのです.結果、従来の製造システムでは超軟性素材を使う製品を効率的に製造するのが困難でした.
当社はファブレス・メーカーですが、上記問題克服のために製造技術・システムの研究開発にも取り組んできました.そして、Bio-Mimicの特性を汲むことで従来とは異なる仕組みで装置のダウンサイジングに成功、今後、並列化とシステム化により、製造革命レベルで製造の効率化を実現します.同技術は当社製造パートナー様にライセンシングします.